昭和55年 (1980)
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【デキゴト】
01・04 ソ連 アフガニスタン首都カブールなど主要都市を制圧
01・04 米 穀物輸出の大幅削減等 ソ連のアフガニスタン侵攻への報復措置発表
01・10 社会党 と 公明党 連合政権構想で正式合意
01・14 インド総選挙で国民会議派が圧勝 インディラ・ガンジー再び首相に…
01・16 ポール・マッカートニー 成田空港で大麻不法所持で逮捕
01・17 新潟地方に大雪 旅客列車90本が運休 交通網混乱
01・18 ソ連大使館員に防衛情報を提供した 自衛隊元陸将補 現職自衛官を逮捕
01・19 芥川賞作家池田満寿夫 と ヴァイオリニスト佐藤陽子が結婚
01・24 衆議院選挙法に 小選挙区・比例代表制の導入を検討
01・25 大平首相 ソ連のアフガン侵攻を非難 ココム輸出規制等の措置を表明
01・29 パンダのホアンホアン 北京から 東京・上野動物園に嫁入り
02・12 熊本市が全国で始めて サリドマイド障害者を公務員に採用
02・15 藤原寛人(富士山レーダー設営者)=作家・新田次郎(八甲田山死の彷徨)没 62歳
02・16 F・コッポラ監督作品 「地獄の黙示録」 封切り
02・16 ダイエーが 小売業で日本初の年間売上高 1兆円を達成
02・20 ねずみ講 「天下一家の会」 会長 内田健一に 破産宣告
02・22 女性の転職情報誌 “とらばーゆ” 創刊
02・23 皇太子 浩宮徳仁親王の成年式 “加冠の儀” 執り行なわれる
02・26 海上自衛隊 環太平洋合同演習 (リムパック) に 初参加
02・26 共産党 社会党を右転換と批判 社会党反論 (社共の対立深まる)
02・26 航空管制官に 初めて女性6人が合格
02・29 新自由クラブ 田川誠一代表・山口敏夫幹事長を 正式決定
02・29 中国共産党 総書記に胡耀邦を選出 劉小奇 前国家主席の名誉回復
03・06 早稲田大 学商学部 入試問題漏洩が発覚 職員ら4人逮捕
03・06 浜田幸一議員(ハマコー) ラスベガスの賭博で生じた 5億円の負けを
ロッキード事件容疑者 小佐野賢治に肩代わりさせていたことが露見
03・07 山口百恵 三浦友和と婚約発表 11/19 挙式 百恵 芸能生活から引退
03・17 東京・原宿で 派手な衣装を着て踊る “竹の子族" が登場 話題に…
03・31 早大・商学部 不正合格者9人 入学辞退
04・01 電気・ガス料金 大幅値上げを実施
04・01 鈴木清順監督作品 「ツィゴイネルワイゼン」 東京タワー駐車場テントで公開
04・03 京都の冷泉家 約800年間秘蔵の 古文書を公開
04・05 ロバート・ベントン監督 映画「クレイマー クレイマー」 封切り
04・05 警視庁 KDD 板野 学 前社長を横領容疑で逮捕
04・07 米 対イラン 禁輸・外交関係断絶など 制裁措置を発表
04・07 NHK 中国との合作ドキュメンタリー 「シルクロード」 の放映開始
04・10 自民党 浜田幸一衆議院議員 ラスベガス賭博問題で議員を辞職
04・17 唐招提寺 「鑑真和上坐像」 1200年ぶりに中国・揚州大明寺に里帰り
04・24 閣議 イランへの経済制裁を決定 5/23 第2次制裁決定(~´81・01・23)
04・25 米 イランの米大使館人質救出作戦に失敗 (カーター大統領に非難集中)
04・25 トラック運転手 銀座道路脇で1億円拾得 11/09 遺失者現れず 所有者に…
04・30 大平首相 外遊 (米→メキシコ→カナダ→西独→ユーゴ→ 5/11)12日間の強行軍
この間 5/8にはユーゴスラビアを訪問 チトー大統領の葬儀に参列している
05・01 犯罪被害者等給付金支給法公布 木下恵介監督作品「息子よ」のモチーフ
05・04 ユーゴのチトー大統領没 (87歳) ユーゴスラビアは集団指導体制に…
05・07 富士通 日本語電子タイプライターを発売 ワープロ普及の口火になる
05・08 世界保健機構(WHO)が 公式に天然痘の根絶を宣言
05・16 自民党福田派欠席の衆院本会議 大平内閣不信任案可決 5/19 衆院解散
05・18 米ワシントン州のセント・ヘレンズ山(2975m)が 123年ぶりに大噴火
05・18 全斗煥将軍ら韓国軍部 金大中らを逮捕 光州市で反政府デモ激化
05・21 デモ隊 光州市を制圧 5/21 戒厳令軍 デモ鎮圧 死者2000人(光州事件)
05・22 飛鳥田社会党委員長 連合政権実現の為〈非武装中立>の棚上げ表明
05・23 黒澤明監督 「影武者」 カンヌ国際映画祭 最優秀グランプリを獲得
05・24 JOC総会 採決で モスクワ・オリンピック不参加を決定
05・27 中国首相 華国鋒 国賓として初来日 天皇に謁見
05・28 プロ野球 ロッテの 張本 勲選手 3000本安打記録を達成
06・12 大平首相 心筋梗塞 入院先で死去 (70歳) 臨時代理に伊東官房長官
06・15 青木 功 第80回全米オープンゴルフで 第2位に…
06・22 衆議院・参議院 初のダブル選挙 … 同情票で自民党圧勝
衆議院=自民284 社会107 公明33 民社32 共産29 新自ク12 社民連3…
参議院=自民69 社会22 公明12 共産7 民社6 諸派2 無所属8
06・22 第6回ベネチア・サミット開催 アフガニスタンからの ソ連軍撤退を要求
06・23 サミット2日目 インフレ抑制 代替エネルギー増大等の宣言を採択
07・07 自民党最高顧問会議 話し合いによる後継総裁選出 鈴木善幸に一本化
07・17 向田邦子の 「短編3作」 志茂田景樹 「黄色い牙」 第83回直木賞に…
07・17 鈴木善幸内閣成立 外相・伊東正義 蔵相・渡辺美智雄 行革・中曽根康弘
07・19 第22回モスクワ・オリンピック開催 (日・米・中国・西独など不参加)
08・01 プロ野球 西武の野村克也選手 3000試合出場を果たす
08・04 広島の衣笠祥雄選手 1247試合連続出場の日本新記録を達成
08・14 富士山 吉田口砂走登山道で 大規模落石事故 12人が死亡
08・14 ポーランドのグダニスク造船所で大規模ストライキ(1万6千人) 発生
09・22 自主管理労組「連帯」結成 委員長に レフ・ワレサ氏
08・15 鈴木首相ら18閣僚 “私人" として 靖国神社に参拝
08・16 国鉄 静岡駅前地下街でガス爆発 死者14人 重軽傷者約233人
08・19 新宿駅西口で 放火によりバス炎上 乗客のうち6人が死亡
09・01 全斗煥 韓国大統領に就任
09・03 元共産党幹部 伊藤 律(除名) 亡命先の中国から29年ぶりに帰国
09・09 イランVSイラク 本格交戦 9/22 全面戦争に発展
09・11 埼玉県警 所沢・富士見産婦人科医院理事長 無免許診療で逮捕
09・19 関連し 厚生大臣斉藤邦吉 病院からの 政治献金受領で引責辞任
09・17 韓国軍法会議 金大中に死刑を判決
09・25 北海道・知床半島横断道路が開通
10・01 第13回 国勢調査 日本の人口 1億1705万7485人
10・15 東大寺大仏殿 "昭和の大修理" 完了 落慶法要は5日間にわたる
10・21 巨人 長嶋茂雄監督 辞任を表明 (実際は球団より罷免か?)
11・04 868本の本塁打世界記録保持者) 巨人 王 貞治 選手 引退を発表
11・04 共和党 ドナルド・レーガン アメリカ大統領に当選
11・20 栃木県川治温泉 プリンス・ホテル全焼 45人が焼死
11・29 川崎市で 2浪中の予備校生 金属バットで両親を撲殺
12・06 差別撤廃を訴え 初の国際人権シンポジゥム 大阪で開催
12・08 元ビートルズ ジョン・レノン 自宅前で射殺される 40歳
12・11 漫才の やすし・きよし が 文化庁の芸術祭賞優秀賞を受賞
12・11 大阪港に ベトナム難民89人を乗せたアメリカ船が入港
12・18 ソ連 コスイギン前首相没 (76歳)
12・22 「人民日報」 毛沢東は “文化大革命で過ち” と 名指しで批判
12・23 自動車工業会が11月までの生産台数1000万台突破と発表 世界一に…
12・24 日比谷野外音楽堂で ジョン・レノンの追悼集会が開催される
● 粗鋼生産量 資本主義国で第一位 ● 自動車生産台数 世界一
● 全国的に冷夏 穀物被害深刻化 ● 校内や家庭内での 暴力急増
● なぜか漫才ブーム
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【物 価】
国鉄普通運賃 最低100円 上野~青森 6800円 新橋~大阪 5700円
ビール 一瓶 240円 たばこピース(10本) 90円 かけそば 280円
週刊朝日 200円 朝日新聞朝夕刊セット 月ぎめ 2600円
都市サラリーマン ; 平均月収 ………………… 350,822円
【流行語】
イエスの方舟 マイコン ルービックキューブ ヘッドフォン族
圧力鍋 それなりに 第3の波 とらばーゆ ぶりっ子
買春 カラスの勝手でしょ ハマコー解散 竹の子族
リクルート・カット 赤信号みんなで渡れば怖くない
【新製品】
カラーテレビ プロフィール KX‐27HF1 ソ ニ ー 228,000円
カ メ ラ ミ ノ ル タ X‐7 コニカミノルタ 39,500円
カ メ ラ オリンパス XA2 オリンパス 27,800円
ラジカセ ランナウエイ SX‐70 パイオニア 69,800円
ステレオ フロア形 SC-5000 デ ノ ン 350,000円
乗用車 マツダ・ファミリア E‐BD 東洋工業 1,038,000円
エアコン 白くまくん RAS‐227WLL 日 立 349,000円
卓上計算機 ソ ー ラ 電 卓 東和サン 6,500円
【ベストセラー】
シ ル ク ロ ー ド 1~4 N H K 取 材 班 日本放送出版協会
項 羽 と 劉 邦 上・中・下 司 馬 遼 太 郎 新 潮 社
ノストラダムスの大予言 Ⅱ 五 島 勉 祥 伝 社
悪 魔 の 選 択 上・下 F・フォーサイス 角 川 書 店
【流行歌】
大 阪 し ぐ れ 作詞・吉岡 治 作曲・市川昭介 歌手・都 はるみ
ふ た り 酒 作詞・たかたかし 作曲・弦 哲也 歌手・川中美幸
雨 の 慕 情 作詞・阿久 悠 作曲・浜 圭介 歌手・八代亜紀
昴 (すばる) 作詞:作曲・谷村新司 歌手・谷村新司
恋 人 よ 作詞:作曲・五輪真弓 歌手・五輪真弓
みちのくひとり旅 作詞・市場 馨 作曲・三島大輔 歌手・山本譲二
【野 球】
プロ野球 優勝 セ・リーグ = 広島 パ・リーグ = 近鉄
日本シリーズ 優勝 広島 4勝 3敗
第52回 選抜高等学校野球大会 高知・高知商 1-0 帝京・東京
第62回 全国高等学校野球選手権大会 神奈川・横浜 6-4 早稲田実・東京
【邦 画】
ツィゴイネルワイゼン 鈴木清順監督 原田芳雄 大谷直子 藤田敏八 ほか
影 武 者 黒澤 明 監督 仲代達矢 山崎 務 ほか
神様のくれた赤ん坊 前田陽一監督 渡瀬恒彦 桃井かおり ほか
遥かなる山の呼び声 山田洋二監督 高倉 健 倍賞千恵子 ほか
父 よ 母 よ ! 木下恵介監督 三原順子 加藤 剛 ほか
四 季 ・ 奈 津 子 東 陽一 監督 烏丸せつこ 佳那晃子 ほか
海 潮 音 橋浦方人監督 池部 良 荻野目慶子 ほか
太陽の子 てだのふあ 浦山桐郎監督 河原崎長一郎 大空真弓 ほか
【洋 画】
クレイマークレイマー ロバート・ベントン監督 ダスティン・ホフマン メルル・ストリーブ ら
地 獄 の 黙 示 録 フランシス・F・コッポラ監督 マーロン・ブランド マーティン・シーン
テ ス ロマン・ポランスキー監督 ナスターシャ・キンスキー ら
ルードウィヒ神々の黄昏 ルキノ・ヴィスコンティ監督 ヘルムート・バーガー トレヴァ・ハワード
マンハッタン ウディ・アレン監督 ウディ・アレン ダイアン・キートン ら
シャイニング スタンリー・キューブリック監督 ジャック・ニコルソン ら
スター・トレック ロバート・ワイズ監督 ウィリアム・シャトナー レナード・ニモイ ら
1 9 4 1 スティーブン・スピルバーグ監督 三船敏郎 ダン・エイクロイド
【この年】
イラン革命の余波を受けて台頭してきた、イスラム勢力に対する危機感と 独裁政権打倒の目的で 54年12月24日、ソヴィエトのブレジネフ書記長は 10万の軍隊をアフガニスタンに送り込んだ。ソ連軍は かつてアメリカが ベトナムで行なったと同じように、ヘリコプターを使って首都カブールほか主要都市を制圧したが、それは 単なる点に過ぎず、広大な山岳や砂漠で抵抗する ムジャヒディーンと呼ばれた民族組織と 周辺イスラム諸国からの義勇軍のゲリラ作戦に手を焼いた。ブレジネフは、冷戦のさなか “人権外交" を標榜していた 弱腰カーター米大統領の足元を読んでいたのかも知れないが、カーターに面従腹背のCIAは、陰でムジャヒディーンに強力な武器援助を行なっていた。つまり ここでも代理戦争が戦われていたのである。
表面化したソ連のアフガン侵攻に対し、カーター大統領は 穀物輸出の大幅削減などの報復措置を講じると共に、この年に予定されていたモスクワ・オリンピックのボイコットを呼びかけた。日本も追随して 対ソ・ココム輸出規制を強化、JOCはオリンピック不参加を決定し、柔道の山下泰裕(八段)ら、選抜が進んでいた 多くの選手に悔し涙を流させた。
“悪戯小僧" が オモチャ箱をひっくり返したような低次元の騒ぎが、社会党に「内閣不信任案」 を提出させ 自民党内に “コップの嵐" を捲き起こす悲喜劇に発展、それが 大平首相にとっては 自らの死に至る悲劇の因となった。原因を作ったのは あの “ハマコー” 浜田幸一である。身ゼニを切って行ったのか 公金をくすねたのかは知らないが、ラスベガスのカジノで一晩のうちに 4億6000万円をすっていた ということが、3月6日になって 「ロッキード裁判」 のプロセスで露見したのだ。しかもその損害を、ひともあろうに小佐野賢治に支払わせていたことが明らかになった。ハマコー自身は ロッキード事件に直接関わりはなかったようだが、当然 問題になり 4月10日 議員辞職に追い込まれている。
周知の通り ハマコーは 千葉県富津近辺のヤクザあがり、自民党 金丸 信 の用心棒を務めたり、石原慎太郎や中川一郎の 「青嵐会」 の端に繋がって、文字通り 暴れん坊の鼻つまみ者だったから、かえって国会が浄化されたようなものだったが、5月に入って 社会党と公明党が、このラスベガス賭博事件や 一連の与党スキャンダルを理由として5月16日、 「大平内閣不信任案」 を提出してきた。前年(昭和54年) の四十日抗争で自民党反主流にあった福田・三木派ら(中曽根派は 土壇場で降りたが…) 69人が、無定見にも野党提出の不信任案に乗っかる形で本会議を欠席し 不信任案は可決されてしまった。与野党とも 政争に明け暮れ 疲弊しきっていたから選挙どころではなく、当の社・公も 否決を承知の気勢をあげたに過ぎなかった筈だったのだが、あれよ あれよ といううちに本会議を通ってしまったというのが実相だった。さすがに大平首相も 間髪を入れずの解散をためらい、目白の闇将軍に 「兄貴 どうしよう どうしよう…」 と電話をかけ、角栄は 「君は 座して死を待つつもりかっ、解散だ 解散に打って出るんだ!」 と 叱咤したという。
5月19日 灘尾衆議院議長は 各党会派の代表を集めて 解散詔書を朗読、前回総選挙から 僅か7ヶ月余で衆議院解散となり、6月22日に 参議院選挙との同日選挙と決まった。この突然に降って湧いたような選挙を 「ハマコー解散」 または 「ハプニング解散」 と呼ぶが、悲劇はその直後に起こった。心労から 大平首相が心筋梗塞を発症したのである。
大平首相の在任期間は通算554日と短く、その多くは無意味な党内抗争に費やされた。前任福田赳夫は 積極的に 「全方位(平和)外交」 を主唱したが、大平の場合 ソ連のアフガニスタン侵攻を切っ掛けとして 対米協調路線に戻らざるを得なかった。折から 4月 3 0 日の訪米を皮切りに、メキシコ→カナダを歴訪の途中 機内でユーゴスラビア・チトー大統領の訃報に接し、そのままオタワからアンカレッジ経由 5月8日の早朝 西ドイツのボンに飛んだ。西ドイツで 給油の後、 ベオグラードに到着、正午からの国葬に参列したが この間にインドのガンジー首相 中国・華国鋒首相と会談、同日深更にはボン国際空港に帰着するという 70歳の老体には酷なスケジュールをこなして、5月11日夕刻羽田空港に帰国 12日間の強行軍を果たした。不信任案は その鼻っ先に突きつけられたわけだ。
いま 私は机の上に、昭和55年4月から6月の 時々刻々 首相の動静記録を置いているが、周囲がお膳立てするとはいえ 一国の総理大臣の仕事というものは 半端な忙しさではない。
解散・総選挙を決めた後も 連日分刻み 秒刻みのタイムテーブルをこなし、5月30日 迎賓館で 来日していた中国・華国鋒首相の歓送会行事に出席したのち、午前11時 新宿における選挙運動第一声を上げたとき 体調に異変が起きた。翌31日虎ノ門病院に入院、一時期小康を得て 友人に 「得病更知旧友情 明常思長夜之愁」 などと漢詩を贈ったりしているが、6月12日病状革まり 死去した。世田谷区瀬田の大平邸で棺を迎えた田中角栄は 人目も憚らず 号泣したという。「あ~う~」 と 鈍牛のような総理大臣であったが、のちのフランス大統領ミッテランのように哲人的風格を持ち 万巻の書物を読んで卓見あり、今にして惜しまれる人物だったと思う。
余談めくが ハマコーは、自らの不始末をどう考えていたか。このときの議員辞職を挟んで 当選は7回を数え、地盤を息子に譲って 恬然(てんぜん) として愧じず 近頃はテレビのCMに顔を出しているとか、廣澤虎造の浪曲ではないが 「~は 死ななきゃ直らない」 のだろう。それよりもむしろ 千葉県3区 選挙民の見識を問いたい。
大平の死によって、 首相権限は 無二の親友で 実直な伊東正義官房長官が代行、自民党総裁権限は 副総裁の西村英一が臨時に継承し、懸案のベネツィア・サミットには 大来佐武郎外務大臣が代理出席した。首相の死去という想定外の事態は 選挙戦を一変させた。自民党の主流派と反主流派は “弔い合戦” とする 極めて日本的な大義名分を掲げて “挙党体制" を構築し、国民もまた同情票を投じた結果 自民党は、衆・参両議院とも 安定的多数を獲得して勝利した。先年 長男を失っていた大平家も 娘婿を香川2区に立候補させ、ここでも1人 世襲議員が誕生した。
総選挙に勝利したことで大平派の後継となった鈴木善幸は、急遽 "和の政治" をスローガンに 総理の座に就くことになった。人材はほかにもいたのだが 政治の力学上の流れでそうなった。鈴木善幸は岩手県の産、あわび・するめ漁の網元の倅、水産学校を出て 社会党から衆議院に出馬し、のち自民党に移って宏池会に加わり もっぱら党務に専念してきたという 異色だが地味な人物、調整能力には長じており、予ねて 本籍田中派 現住所大平派と目されていた。そのあたりを買ったのか キングメーカー角栄は、時期首班に善幸を擁立 ロッキード裁判を慮って 法務大臣には無派閥 “隠れ田中派” の奥野誠亮を嵌め込み その上 灰色高官 二階堂 進 を総務会長に押込んだ。鈴木内閣が 「直角内閣」 といわれる所以である。
政治談議を離れて、この年のトピックを時系列に追ってみよう。
昭和47年8月 三越百貨店を抜いて 売上高で小売業の王座に坐ったスーパー・ダイエー(中内 功 社長) が、この年2月 売上高 1兆円を突破する快挙を成し遂げた。今回 私は、中内氏の経歴を調べていて 彼が 神戸の小学校で、私にとって先輩に当たることを知って驚いた。その小学校は 今は高速道路の高架下になってしまっている。
4月になると 歌人藤原定家の子孫 京都・冷泉家が、800年にわたって秘蔵してきた 御文庫内の重要文化財 古文書・古写本類を公開し、京都文化博物館によって整理・目録作成が始められた。同じ月 NHKが中国電視台とタイアップして、西安を出発点とする中国領内 “シルクロード” のドキュメンタリーを放映開始した。ナレーションは石坂浩二 喜多郎の音楽が大ヒットしたが、日本の正倉院まで宝物をもたらした “シルクロード” の歴史と風光を取材した力作は NHKならではのものであった。もうひとつ 4月17日 奈良・唐招提寺の 「鑑真和上座像」 が、1200年の時空を超えて 中国江蘇省揚州市の大明寺 に里帰りした。鑑真は天平勝宝5年(753) 盲いるほどの苦難の末、海を渡って日本に仏教を伝えた 中国 唐時代の高僧であるが、このトピックは 日中友好の一章を画するものであった。
7月には 西側諸国が大挙 ボイコットした、モスクワ・オリンピックが開催された。英・仏・蘭 など一部参加した国もあったが、優勝しても 国旗掲揚・国歌の吹奏は行なわれなかった。4年後のロサンゼルス・オリンピックには 今度はソ連・東欧諸国が参加せず スポーツの世界にも政治が色濃く影を落とした。9月には イラン・イラク 隣国同士が戦争を起こした。8年も続き 産油国地域での戦火であったために、アメリカが介入するなど世界的に影響を及ぼしたが、根底には シーア派とスンニ派 それにクルド人が絡む、宗教的角逐があった。
話は逸れるが、この年 「ノストラダムスの大予言(五島 勉 訳)」 なる奇書がミリオンセラーになっている。16世紀に フランスの医師であり占星術師が 猖獗 (しょうけつ)を極めていたペストを鎮静化したとして 国王アンリ2世の庇護を受け著わしたとされるが、1999年に東(ひむがし)から恐怖の大王が現れて 人類を滅亡させるという終末予言で、環境の超汚染や核戦争・大震災の恐怖と結びついて 人々に広く読まれ、新興宗教がこれに便乗した。オウム真理教なども そのひとつだったか?
11月29日 川崎市で 大学受験2浪中の少年が、金属バットで両親を撲殺するという 凄惨なデキゴトが起こった。父親が東大出 母親は名門短大卒、長男も早大出身というエリート家族、次男は普段おとなしい性格であった。ある日 次男は 父親の財布から1万円を抜き取り ウィスキーを少量 舐めたことがばれて父親から罵倒され、溜っていた鬱積が爆発したのだ。このケースに限らず この時代子供たちの 「家庭内暴力事件」 が話題となった。生活が豊かになり、少子化が進み、甘やかされ過保護でありながら 躾がなおざりにされ、過剰な期待に追い詰められた思春期の子供が 些細なことで瞬時に暴力を振るう、それは 戦後の教育で育った親たちへの 返り討ちといえた。
オリンピックの年は アメリカ大統領選挙が行なわれる。11月4日 共和党ドナルド・レーガンが当選、やがて レーガンは経済政策に "新自由主義・レーガノミクス” を採用、世界政治の潮流を変えることになって 貧富の格差が拡大する不幸な時代を迎えた。
この年なぜか "漫才ブーム” に沸いた。テレビの番組には やすし・きよし、セント・ルイス、てんや・わんや、紳助・竜介、レッツゴー三匹、内海桂子・好江、Wけんじ、などが続々登場してきて お茶の間に笑いが渦巻いた。お笑いといえば 松竹新喜劇の藤山寛美が関西で健闘し、関東ではドリフターズや萩本欽一ががんばっていた。
しかしナゼ 急に漫才にスポットライトが当たるようになったのか。考えられることは 高度経済成長が終息し、これまでのように あまり あくせくと働くことに倦んだ人たちが もっと気楽な癒しを 求めるようになったのかも知れない。ノストラダムスの大予言の 対角線上的現象とも言える。大阪の老舗 吉本興業が東京へ進出したのも、丁度この頃だった。関東では耳慣れなかった "大阪弁" と、とことん “がめつい” アクの強さが テレビの窓を通して全国区になったのだ。東京の軽妙洒脱な笑いは、次第に えげつない爆笑に取って代わられていった。それか あらぬか、12月11日 漫才の 西川きよしと横山やすし が 文化庁の芸術祭賞・優秀賞を掻っ攫っていった。
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「総理大臣の犯罪」 の付録として “ヤクオ ギャラリー” に
『2050年の世界地図に “日本” は存在するか』
を搭載しました。ぜひご覧ください。 奥 山 和


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